思ってたのと違ったけどめちゃくちゃ面白かったです。
屋根裏の自室で、ティーンエイジャーのケイシーはオンラインのロールプレイングホラーゲームにのめり込んでいく。そんな中で彼女は自分に起きている、あるいは起きていない変化について記録し始める。
出典:IMDb ※上記日本語は拙訳による
主人公ケイシーはネットで流行りの「ワールズフェア(万博)チャレンジ」というゲームに参加します。このゲームを開始するには奇妙な儀式があり、
自分の血をモニターに塗り付け、その前で"I want to go to the world’s fair"と三回唱える
というもの。そしてこのゲームに参加した者には、心身に奇妙な変化が訪れるらしいのですが…
ケイシーは自分の身にどのような変化が起きるのか、その様子を録画して動画投稿するようになります。
心霊・怪奇現象ホラーではない
これもう盛大にネタバレなのですが、この映画は「オカルト現象が起きて怖い」系の作品ではありませんでした。勝手にTALK TO ME 的なテンションかと思って見始めたのですが全然違ったのでビックリです。でもある意味オカルト現象よりもずっと怖かったし、めちゃくちゃ面白かったです。
ワールズフェア(万博)とは
これなんでワールズフェアなんだろうかと見ている間とても不思議だったのですが、作中で起きる一連の出来事は「インターネットという会場で開催される見世物大会」なのかもしれないと見終わってから思いました。ケイシーはゲームをきっかけに、自分が自分でなくなっていくかのような変化を体感します。それを動画配信する。その配信される動画を見る人々がいる。見る人と見られる人の関係ですね。ただこの映画はその二者だけでは終わらず、彼らをスクリーンの中に眺めている観客をも巻き込んでいくような構造があり、それがとても面白く、この作品の怖さでもあると感じました。
虚構と現実の境界が揺らぐ
なんかね人は「求められる(こうなりたい)キャラクターを演じすぎるあまり、現実の自己を見失う」ことがあるんじゃないだろうかと、そういう過程をケイシーを通して見たような気がしました。誰かに認められたい、刺激が欲しいという欲求と、現実の夜が怖くないような安心感への渇望(ケイシーはぬいぐるみと一緒に眠ったり、入眠動画を見たりして過ごしています)、その両極端の狭間で自己がどこにあるのかわからなくなるような。ケイシーはバランスを喪失するんですよね。こっちはなんか「十代ってあぶね〜な……」と多少は思ったりもするんですけど、それも含めて良さではありました。
伸びない再生数
あとケイシーの動画再生数が39回とか(ほぼそれ以下)なのがやたらリアルなのも少し哀しかったです。今や猫も杓子も動画配信されてますが、大人気になる方はごくわずかですよね。だけど彼らは動画を配信し続ける。結果的には再生数じゃなくて「私はここにいるよ」っていうメッセージなのかなと。映画の中でケイシーは友達も出てこないし、父親も声だけです。雪道を一人歩き、物置小屋で夜中に入眠動画を見て眠りにつこうとする。誰が見ているのか、見ていないのかもわからない世の中に向けて何かを発するのは、そういう彼女の輪郭なのかもしれないと思います。
謎の閲覧者・JLB
この映画にはケイシーの他にJLBという男性が登場します。ケイシーの動画を見て彼女を案ずるようになったJLB。ケイシーにコンタクトを試みた結果、二人はSkypeで通話をするようになります。JLBは立派な家に住む成人男性ですが、家族もなく一人で暮らしているような様子が伺えます。このJLBおじさんの登場により、物語はさらにカオスな方向へと捩れまくっていくのですが……
真実を語っているのは誰なのか?
なぜ自分の物語に他者を必要とするのか?
考えれば考えるほど面白く、よりわからなくなってくる(ダメじゃん)作品でした。また見たいです。